2012/09/18

金理有個展「掟破」@SHUHALLY





横浜・関内にあるSHUHALLYで開催されている金理有さんの個展「掟破」に行ってきました。
SHUHALLYの立地がおもしろく、街中のマンションの一室に入るとそこには別世界が広がっていて
はじめは驚きますが、よくよく考えてみれば茶室というのは市中の山居としてつくられたものであって
本来的なあり方であることが理解できます。
次にこの展示の特異なところは通常の展示スペースではなくお茶席に展示されているところで、
待合から露地、茶室と至るところに金さんの作品が置かれています。
そしてもちろん茶道具もすべて金さんがつくられていて、茶会では彼の茶碗でお茶をいただくことができました。
やきものの質感を味わうのに実際に触ることができるというのはオブジェであってもとても重要なことであって、
うつわに至っては実際に口をつけることができてもっとも繊細な感覚をもって質感を楽しむことができます。
そういう意味で五感を駆使して楽しむ茶の湯という総合芸術の中で作品と向き合うというのは
とても自然なことであるように感じました。

今日茶の湯というとすごく格式ばったものだと思われて敬遠されがちですが、
元々お茶を点てて飲むという単純なしぐさをどんどん尖鋭化されていったものであって、
実はエンターテイメントとして極めて優れていると思います。
そしてそのしつらえや振る舞いを見せるというのはインスタレーション・パフォーマンスと捉えることができ、
現代アートの文脈とも親和性が高いと思います。
さらに言うならばコンテクストを重視するあまりにモノに対する意識が希薄になってしまった現代アートから見れば、
やきものなど工芸と呼ばれるものはもの/ことの双方が分かちがたく結びついているわけで、
最近さまざまな方面から注目されている理由はここにあります。

そして茶会のあと金さん、庵主の松村さんと話していてあらためて感じたことは、
松岡正剛さんの指摘する通り、河原者と呼ばれる人たちが歌舞伎を作り上げたように、
日本の伝統文化は常に下からの突き上げによって形成されてきており、
(千利休という人はまさにその典型ではないでしょうか)
その意味で現代のストリートカルチャーとも強い類似性があるということです。
松岡さんは「日本語ラップは万葉仮名以来の日本語の革命である」とおっしゃっていましたが、
音楽に限らずそれを取り巻く文化にはとてつもない可能性が秘められているように思うのです。
もちろん性急にそれらを結びつけるのは避けなければなりませんが、
きっといずれどこかで接点が生まれてくるものを思っています。

金さん、松村さん、昨年に引き続き楽しい時間を過ごせてもらいどうもありがとうございました!
展示は今月23日までやっているそうなので、都合が合う方はぜひ観に行ってみてください!

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